Silky

先日、北朝鮮の兵士が南北間にの非武装地帯板門店を経由して韓国側に脱北したことが大きなニュースとなりました。

このニュースを聞いたとき、私の頭に浮かんだのは2000年に公開された『JSA』という韓国の映画です。この度のニュースで韓国と北朝鮮が抱える統一問題に興味がわいた人も多いと思いますが、この映画は両者の緊迫した関係や、「北朝鮮兵士も人間である」ということがよく伝わってくる素晴らしい映画ですので、この機会に紹介します。

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『JSA』と脱北事件の類似性

まずは、ニュースにもなった今回の事件の映像をご覧下さい。(引用元:Twitter)

車が通っている場所は、『JSA』に登場する「帰らざる橋」のひとつ北側にある橋です。

『帰らざる橋』

『帰らざる橋』は、板門店の哨戒所付近にある沙川江にかかっている橋です。

朝鮮戦争時、捕虜の交換が行われた場所で、捕虜達は、この橋の上で今後北朝鮮または韓国いずれの国で暮らすかの選択を迫られました。1度選択すると選択しなかった方の国には渡れないため、このような名前が付けられたのです。

  • 白い線:韓国と北朝鮮の境界線。北が北朝鮮で南が韓国。
  • 赤い印:「帰らざる橋」
  • 橋の右側にある建物:今回のニュースにもなった哨戒所等。

Silky

この地図をズームアウト(-)すると、「帰らざる橋」の北側(上側)に十字路がありますが、その十字路あたりが、上の映像で車が走っている場所です。脱北兵は、そのまま回り込むような形で共同警備区域に入り、板門閣の手前で右折。そのまま韓国側に逃げ込もうとするも、タイヤが溝にはまったため車を乗り捨てて走ったのです。

この地図をさらにズームアウト(-)すると、すぐ近くでは、南北の農家が農業を営んでいるということも分かります。

『JSA』のあらすじ(ネタばれなし)

韓国と北朝鮮の国境にあたる共同警備区域(Joint Security Area)にある「帰らざる橋」で、韓国兵士イ・スヒョク(イ・ビョンホン)が足にケガを負って韓国側に歩いてくる姿が発見された。韓国人兵士を助けたい韓国軍と、韓国側に向かう不審者を銃殺したい北朝鮮軍は、橋をまたいで銃撃戦となる。

橋を渡って北朝鮮側にある哨戒所では、北朝鮮の警備隊兵士チョン・ウジン(シン・ハギュン)を含む2名が銃殺され、北朝鮮の兵士オ・ギョンピョル(ソン・ガンホ)は生死の境を彷徨っていた。

韓国兵士イ・スヒョクは、自らがその北朝鮮兵を殺害したと自白していた。もっとも、この事件に関する南北の主張は大きく食い違う。

韓国兵士イ・スヒョクは「野外で用を足している最中に北朝鮮の兵士に拉致されたため、脱出してきた」と語る。他方、命を取り留めた北朝鮮の兵士オ・ギョンピョルは、「韓国兵士が急に哨戒所に入ってきて、自分たちを撃った」と言うのだ。

そこで、南北両国(※北=北朝鮮、南=韓国)は事件調査のために、共同の調査チームを設立。中立国停戦監視委員会から軍人経験をもつ韓国系スイス人将校ソフィー(イ・ヨンエ)を参加させ、事実の解明にあたることにした。

両者の言い分は、なぜ食い違うのか。どちらが、何のために嘘をついているのか。事件の真相は、誰もが予想し得ないものだった...。

JSA 配信状況[2017年12月22日現在]

  • Netflix (配信なし)
  • Hulu (配信なし)
  • U-NEXT (配信なし)
  • dTV 
  • Amazon Prime (配信なし)

※本作品の配信情報は上記の日付時点のものです。現在は配信が終了している場合がありますので、詳細は各社公式ホームページでご確認ください。

続けて、今から『JSA』を見るなら知っておきたい豆知識を紹介します。

 

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韓国と北朝鮮の関係

『JSA』に登場する用語を説明した後、両者のリアルな関係を解説します。

『中立国停戦監視委員会』

当初、朝鮮戦争において中立を宣言したスイス、スウェーデン、チェコスロバキア(当時)、ポーランドの4カ国が板門店に置いた委員会の名称。現在はチェコスロバキアとポーランドが脱退し、スイスとスェーデンのみが運営している。

Silky
『JSA』に登場する女性軍人のソフィーは、スイスから派遣された調整官という設定です。

韓国の北朝鮮に対する感情はとても複雑

韓国と北朝鮮の間には、親戚でありながら離ればなれになっているという人も多いです。文字通り元は1つの国家だったためです。

実際、私の韓国人友人に北朝鮮の印象を聞いてみると、北朝鮮は「怖い」けれど「嫌い」という感情はないと言います。

ではやはり統一したいのかと問うと、そういう訳でもないようで。というのも、南北統一すれば北朝鮮の負の財産を韓国が背負い込むことになるので、韓国の経済が危なくなる、と。だから、正直、統一は勘弁して欲しいというのが本音なんだそうです。何と薄情なw

ですが、こういった国民感情を知っていれば、この『JSA』で起こった出来事もあながち夢物語ではないと分かります。

韓国と北朝鮮では話す言葉が違う?

韓国人が話す韓国語と、北朝鮮人が話す朝鮮語は、基本的に同じ言語です。その差は関西弁と標準語程度。両国の人間は、互いの言葉をほぼ完璧に理解できます。

ただ、韓国人に言わせると、北朝鮮の言葉はダサいそうです。田舎者っぽく聞こえるんですって。もっとも、両国が分断される前の首都は北朝鮮の平壌ですから、伝統的には北朝鮮の言葉が標準語のはずなんですけどね。笑

ちなみに、韓国人の中には同じ「李」と書いて「リー」さんと「イ」さんがいます。「林」と書いて「リム」さんと「イム」さんも。他には「柳」と書いて「リュ」さんと「ユ」さんもいます。両者の違いはご存じですか?

実は、前者は北朝鮮読み、後者は韓国読みなんです。とはいえ「リュです」と名乗る人は北朝鮮の人だという訳ではありません。単に、分断前のルーツが北の方にあったということで、今は普通の韓国人です。

他人を「兄貴(ヒョン)」と呼ぶことの意味

『JSA』では、年下の男性が年上の男性を「兄貴(ヒョン)」と親しみを込めて呼ぶ場面が多く登場します。

「兄貴」という呼び方は、日本人にはヤクザみたいな印象を与えますが、これ、韓国ではごく普通のことなんです。親しくなれば、男(年下)が男(年上)を呼ぶ時は「兄貴(ヒョン)」、男(年上)が男(年下)を呼ぶ時は「お前(ノ)」または下の名前となります。

日本語のもつ「兄貴」は硬派な印象ですが、韓国の「兄貴(ヒョン)」は日本語の「にーちゃん」に近く、とても親しみを込めた呼び方になります。

実際、韓国人男性は友情にも厚く、男性同士の距離も近いです。どれくらい近いかというと、仲が良い同士のどちらかが酔っ払ったら、電車で膝枕してあげるくらい。それが「普通で当然だ。友達なんだから」ってくらい。

国外に出れば、こういった行為は性的指向に関して誤解を受けることも多いらしく、メジャーリーグに行ったある韓国人選手は、シャワールームで他の選手の背中を流してあげようかと提案したところ(韓国では普通)、誤解されたらしいですよ。

ソフィーを演じるイ・ヨンエ

ソフィーを演じるイ・ヨンエを紹介します。超絶美人ですよね。『JSA』に出演した時は20代だったのですが、今はもう46歳。ですが、この美貌です。

韓国人で美人と聞くと「どうせ整形でしょ!」と切り捨てる人もいますが(実際、多いのですが)、このイ・ヨンエは韓国で数少ない整形無しの天然美人です。韓国では「酸素のような女性」という触れ込みで大ブレイクした女優さんです。若い頃の写真も見たい方は、イ・ヨンエの画像をごらんください。

イ・ソンシクが「自分の彼女だ」と行って見せた写真

韓国側のイ・ソンシク兵士、が「自分の彼女だ」と言って北朝鮮兵に女性の写真を見せる場面があります。その写真に写っていた女性は、当時の(というか今も人気がある)韓国の美人女優「コ・ソヨン」です(※こちらも無整形で有名)。

北朝鮮人は韓国の女優なんて知りませんので「わ~!美人!」と盛り上がっていましたが、韓国人スヒョクはそれが芸能人の写真だと分かっていたために、呆れた目でソンシクを見ていたのです。

このコ・ソヨン、「あなたのことが好きだから」で有名なチャン・ドンゴンと結婚しました。ですが、チャン・ドンゴンと結婚する前は、ある財閥の御曹司の子供を身ごもったのではないかという噂がまことしやかにささやかれていた、いわくつきの女優さんです。

JSAと言えば「チョコパイ」

ギョンピルが美味しいと食べていたチョコパイは、こちらの『情(ジョン)』というものです。ええ、そうです。どう見ても日本のチョコパイのパクリです。

が、日本のものより甘さ控えめで、モチモチしていて美味しいですよ。

甘い物苦手な私もたま~に食べたくなって、新大久保に買いに行くことがあります。

『JSA』の感想

この映画は、「同じ民族同士、本当は争いたくないし、争うべきではない」という朝鮮民族の思いが強く伝わってくる切ない映画でした。まずは、ネタバレになりますが、あらすじの続きから。

事件の真相は、誰もが予想できないものだった。

ひょんなことがキッカケで北朝鮮兵士に命を助けられた韓国人兵士。その後、両者の間に友情が芽生え、韓国人兵士は境界線を越えて北朝鮮の哨戒所に出入りするようになる。

しかし、韓国人兵士が北朝鮮側の哨戒所にいるなど、許されないこと。ある日、北朝鮮の将校が哨戒所に入ってきて、韓国人兵士が見つかってしまう。銃を向け合う両者。気が動転した韓国人兵士は、友人である1人の北朝鮮兵士と入ってきた北朝鮮の将校を撃ってしまう。

しかし、もう1人の北朝鮮兵士は、味方であるはずの北朝鮮将校を殺し、韓国人兵士を逃がす。それが事件の真相だった。

敵側となれ合っているなどということが知れると、両国の兵士はそれぞれスパイ行為で処罰されかねない。相手のことを守るためにも、本当のことは言えないのだ。だから両者ともに嘘の事実を陳述し、結果として両国の主張が食い違ったのだった。

事件の真相としては、北朝鮮兵士のウジンを撃ったのはスヒョクで、スヒョクはその後続けてギョンピルも撃とうとしました。ギョンピルは、それでもなおスヒョクをかばったのですね。

ギョンピルは、スヒョクと違って極限状態に置かれることには慣れていますし、人を殺したこともあります。だから、あんな場面でもスヒョクの友情を疑いはしなかった。「2人を許せるか?」というソフィーの質問には答えなったギョンピルですが、スヒョクを逃がした時点で答えは決まっています。

最後はスヒョクが自殺をするという悲しい結末となってしまいましたが、この映画を見て南北の対立に関して考えを改めたという人も多いのでは無いでしょうか。

何十年も前の昔の政府の人間が作った政治的な壁を、なぜ現代の市民が保ち続けなければいけないのか。互いにそのメリットはどこにあるのか。

映画の本編では、最後の挨拶をしに行った日、スヒョクがギョンピルたちと記念撮影をするシーンがあります。その時、イ・ソンシクが後ろに飾られた金日成と金正日の絵が写りこまないように写真を撮りますが、あれこそ「政治的な対立には目をつぶって個人・市民レベルで交流したい」という韓国人の内心を象徴するシーンだと感じました。

一方で、スイス人軍人の言っていた板門店ルール、「事実を隠してこそ平和が保たれる」。これは、今の韓国人の姿勢をそのまま表したものだと思います。

実際、前述の友人も、南北は一生このまま停戦中でいいらしく、戦争も統一もしたくないらしいです。ただ、今の北朝鮮を見ていると、韓国はそんな都合のいい姿勢をいつまでも続けてはいられないでしょう。

日本人の私でさえ、見て見ぬふりを続けているのは限界だと感じています。韓国語が話せるようになってからは特に、どうしても無関心ではいられないんですよね。北朝鮮の漁船が漂着したというニュースを見る度、彼らと話をしてみたいと思ってしまいます。

日本のすぐ隣で、船で数時間で行ける場所で、飢えに苦しみ人権を侵害されている人々がいる。インターネットで世界がつながって以来、世界は狭くなったはずなのに、交流ができないお隣の国。

いつの日か、北朝鮮の人とハングル使ってチャットしたりできる日が来るのでしょうか…。

『JSA』の配信情報と関連記事

JSA 配信状況[2017年12月22日現在]

  • Netflix (配信なし)
  • Hulu (配信なし)
  • U-NEXT (配信なし)
  • dTV 
  • Amazon Prime (配信なし)

※本作品の配信情報は上記の日付時点のものです。現在は配信が終了している場合がありますので、詳細は各社公式ホームページでご確認ください。

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